開墾のあゆみ

高橋虹歩

葛尾村は戦後、樺太や満州から引き上げた人々が開墾し集落として徐々に形作られていきました。開墾当初は、食べるものも仕事もままならず、人々は炭焼で生計を立て、その他は物々交換でお互いを支え合って生活していました。山を開き、藁を編み、作物を育て、鶏や羊を育てる。そんな長い長い積み重ねの中で、葛尾村は畜産にも農作物にも恵まれた立派な集落になりました。

しかし、2011年3月11日に東日本大震災の原発事故の影響で村は全村避難、計画的避難区域となり、豊かな自然は放射性物質によって汚染され、村から人が消えてしまいました。再び葛尾村は未開の地、はたまた住めない土地になってしまったのです。人々は悲しみという言葉では言い表せない程の絶望を味わいました。これまで続いてきた歴史や生業が、たくさん、失われました。そんな中で懸命に避難生活を続けたのです。これが復興という名の新たな開墾の始まりです。

除染から始まり、畜産の再開、作物の栽培と戦後の開墾と同じように震災後も葛尾に暮らす人々が葛尾に希望をもたらしてくれました。2020年には復興創生インターンが開始し、多くの若者が村に関わるようになりました。若者たちはよそものである自分達を暖かく向かい入れてくれる葛尾の人々の愛情を受け取りこの村の未来を深く考えました。

葛尾村は現在、人が集まり続ける場所となりました。 葛尾を守りたいという開墾者の強い思いが今もここに根付いているから、ここを訪れる人もまたこの場所を守りたいと思うのかもしれません。 対話を重ね、葛尾村での新しい暮らし方を想像するという開墾は今まさに行われています。

葛尾村はずっとここにあります。だから、いつかまたここに来てください。 この村はひとつひとつ進んでゆく、強くて、やさしい村です。

そして何より、ここはあなたの村だから

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